現代音楽レーダーContemporary Music Radar
ISSUE 003
29 SEP 2026 / TOKYO
NEW MUSIC / SOUND / PERFORMANCE

音の現在を、
境界から読む。

現代音楽、実験音楽、即興、電子音響、ジャズ。国内外の新作・初演・公演から、いま聴くべき動きを選び、その背景まで伝えます。

Lead story
20
Andromeda Mega Express Orchestra / Berlin → Tokyo

20周年で初来日——「大編成」の意味を作り替える12人

Daniel Glatzel率いるAndromeda Mega Express Orchestraが10月に初来日。ジャズ、アヴァンギャルド、伝統音楽、インディー、エレクトロニカを、折衷ではなく一つの作曲システムとして扱う。250公演・25カ国を経たベルリンの実験的大編成が東京へ。

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Selected signals

今週の動き

14 STORIES
WORLD PREMIERE

藤倉大《Amber Alchemy》世界初演

Antonio Pappano指揮London Symphony Orchestraがサントリーホールで初演。マーラー《復活》と同じプログラムに置かれた新作委嘱。

KAJIMOTO ↗
RESIDENCY

松本真結子、台北へ

TOKAS二都市間交流事業で9〜11月、台北のトレジャーヒル・アーティスト・ヴィレッジに滞在。台湾各地の寺院や廟の音と空間性、民間信仰をリサーチし、現地の演奏家やコミュニティとのワークショップ、サウンド・インスタレーション制作へつなげる。

TOKAS:松本真結子 ↗
CURATION

Chico Dub、東京でリサーチ

ブラジルを拠点に実験音楽とサウンド・アートを専門とするキュレーターChico Dubが、TOKASのリサーチ・レジデンスで9〜11月に東京滞在。日本のノイズ・シーンを、空間、社会、パフォーマンス、音響の側面から調査し、ブラジルと日本を結ぶ将来のキュレーションへつなげる。

TOKAS:CHICO DUB ↗
ELECTRONIC / CLUB

Maemm——テクノと実験音響の境界

ミニマル/ヒプノティック・テクノからアンビエント、実験音響へ。DJセットを「電子音響の構成」として聴く。

DOMMUNE ↗
ORCHESTRA

Tania León《Imágenes Mestizas》世界初演

Gustavo Dudamel指揮New York Philharmonicによる委嘱新作。複数文化と複数リズムの共存を大管弦楽へ持ち込む。

NEW YORK PHILHARMONIC ↗
ORCHESTRA

Michael Torke《Ascent》世界初演

Rochester Philharmonic Orchestraの「Voices of Today」委嘱。歴史的レパートリーの中に現在の新作を置く。

ROCHESTER PHILHARMONIC ↗
MICROTONAL

Musikfabrik「Composing with Tuning」

純正律、HEJI記譜、音響学、弦・金管の微分音奏法を共有するアカデミー。調律が個人的語法から演奏家の技術体系へ。

MUSIKFABRIK ↗
MODULAR

Sergei Tcherepnin、Serge Modularによる新作

1970年代から続くSerge Modular synthesizerを用い、noise、trance、minimalismを都市の音響風景へ編成する。

ISSUE PROJECT ROOM ↗
MAQAM / JAZZ

Firas Zreik《Tarabesque》

カーヌーンとサックス/ナイ、ギター、ベース、打楽器。maqam、tarab、即興、ジャズを一つの現代的室内楽へ。

ROULETTE ↗
NEW RELEASE

Jean-Michel Blais《mirador》

ピアノ中心のポスト・ミニマリズムから、合唱、弦、シンセ、ドラムマシン、アンデス音楽までを含む拡張された作曲へ。

OFFICIAL ↗
CHAMBER JAZZ

Émile Parisien《Floating》

soprano sax、piano、double bass、tablaという変則カルテット。静けさと即興を重視した室内楽的ジャズ。180g LPも発売。

ACT MUSIC ↗
CREATIVE MUSIC

Trio Imagination《Creative Inspirations》

David Virelles、Reggie Workman、Andrew Cyrilleによる初録音。Trio 3の系譜を受け継ぎながら、キューバ音楽の記憶、現代作曲、即興を、余白の大きな三者対話へと結び直す。

LISTEN / BANDCAMP ↗
FREE IMPROVISATION

Brand / Roberts / Champion / Karlsen《Improvisations》

Sarah Gail Brand、Cath Roberts、Andy Champion、Emil Karlsenが初対面で行ったライヴ録音を作品化。トロンボーン、バリトンサックス、ベース、ドラムによる、文字どおり安全網なしの集団即興。

LISTEN / BANDCAMP ↗
FESTIVAL

Biennale Musica——灰野敬二+Sarah Davachi

Caterina Barbieriが率いる70回目。金獅子は灰野敬二、銀獅子はSarah Davachi。23の新作、18の世界初演を含む。

LA BIENNALE ↗
Deep listening / artist files

蒸気波
レーダー

Andromeda Mega Express Orchestra → Émile Parisien → Keiji Haino

ニュースの続きを追うための「入口」。直近の出来事を繰り返すのではなく、経歴、過去作、録音、コラボレーションへ遡って、その音楽がどこから来たのかを深掘りする。

01

Andromeda Mega Express Orchestra

LARGE ENSEMBLE / COMPOSITION

Daniel Glatzelが2006年ベルリンで結成。固定ジャンルを持たず、ジャズ、現代作曲、ロック、エレクトロニカ、各地の伝統音楽を大編成のための作曲へ統合してきた。Anthony Braxton、The Notwist、Efterklang、Hermeto Pascoalらとの共演歴も、この集団の射程をよく示している。

過去作を辿る:《Take Off!》(2009) → 《Bum Bum》(2012) → 《Vula》(2017) → 《Means of Transport》(2021)。20年の変化をアルバム単位で追うと、「ジャンル横断」よりも大編成そのものを一つの作曲装置として扱っていることが見えてくる。

02

Émile Parisien

SOPRANO SAX / CHAMBER JAZZ

1982年生まれのフランスのソプラノ・サックス奏者/作曲家。Michel Portal、Vincent Peirani、Joachim Kühnらとの仕事を通じ、現代ヨーロッパ・ジャズの中でも特に作曲と即興の境界を精密に扱ってきた。

深掘りルート:Vincent Peiraniとの《Abrazo》、大型アンサンブルやMichel Portal周辺の録音を経て、新作《Floating》へ。《Floating》ではYaron Herman、Linda May Han Oh、Prabhu Edouardと、ドラムセットを置かない室内楽的なカルテットを形成。CD/デジタルに加えて180g LPあり。

03

Keiji Haino

IMPROVISATION / NOISE / PRESENCE

1970年代から半世紀以上、ロック、フリージャズ、ノイズ、電子音響、ドローン、伝統楽器を横断してきた即興家。Biennale Musicaは2026年金獅子生涯功労賞の理由として、即興と現代的実験の言語への先駆的貢献を挙げる。

入口になる系譜:不失者 → ソロ《Watashi Dake?》→ Loren Connorsとの共演 → Jim O'Rourke/Oren Ambarchiとのトリオ。爆音だけでなく、音が立ち上がる前後の沈黙、身体、空間まで含めて「演奏」とする姿勢を追うと像が変わる。