現代音楽レーダーContemporary Music Radar
ISSUE 001
19 SEP 2026 / TOKYO
NEW MUSIC / SOUND / PERFORMANCE

音の現在を、
境界から読む。

現代音楽、実験音楽、即興、電子音響、ジャズ。国内外の新作・初演・公演から、いま聴くべき動きを選び、その背景まで伝えます。

Lead story
100
Anthony Braxton / Scotland

100本のチューバが、庭園を巨大な音響空間へ変える

Anthony Braxton《Composition No. 19 (for 100 Tubas)》がLammermuir Festivalで上演。25人ずつ4群に分かれ、記譜された構造と即興のあいだを往復する。フリージャズの祝祭というより、群衆と空間そのものを作曲する試みだ。

THE GUARDIANで読む ↗
Selected signals

今週の動き

8 STORIES
VOICE / BODY

Meredith Monkを、いま聴き直す

Phaedra Ensembleが《Realm Variations》《Stringsongs》などを展開。声・身体・映像・器楽をひとつの作曲行為として扱うMonkの先駆性が、現在に響く。

SOURCE ↗
ORCHESTRA

Cathy Milliken、新作イングリッシュホルン協奏曲

Simon Rattle指揮ベルリン・フィルが《why feather yellow》を世界初演。ソリストはDominik Wollenweber。

PROGRAMME ↗
DIALOGUE

Brett Deanがシューマンと交わす「対話」

新作《Conversations with Schumann》がベルリンで初演。過去の作品を引用するのではなく、現在の作曲語法へ接続し直す。

CALENDAR ↗
CONCERTO

田中カレン《Verse of Light》

Håkan Hardenbergerを独奏に迎えた新作トランペット協奏曲。「光と闇」「技術と人間」の対立を管弦楽の色彩へ翻訳する。

SCHOTT MUSIC ↗
EMERGING

我妻英《象られた祈り》

武満徹作曲賞第1位の若手作曲家による新作管弦楽曲を山形交響楽団が演奏。日本の次代のオーケストラ作品を追う。

YAMAGATA SYMPHONY ↗
AI / MUSIC

AI以後、「作曲」は何を意味するか

横浜で「21.5世紀の音楽―AIと現代の音楽」。生成の技法紹介ではなく、作曲という行為の定義そのものを問う。

CONCERT INFO ↗
DURATION

Feldman《For Philip Guston》、4時間半の時間

代官山での生誕100年記念公演。高橋悠治の委嘱新作とともに、「静けさ」ではなく時間をどう聴くかを問い直す。

CONCERT INFO ↗
JAZZ / SCORE

Craig Taborn+PRISM Quartet

《Three Animal Riddles》はピアノ即興と記譜されたサックス四重奏の対話。錬金術、Ellington、Cecil Taylorが一本の線上に並ぶ。

NEW MUSIC USA ↗
This month's listening route

蒸気波
レーダー

Feldman → Meredith Monk → Anthony Braxton → Craig Taborn → Camille Norment

5人の音楽をたどると、現代音楽が新しい音を生み出すだけでなく、「聴く時間」と「聴く場所」そのものを設計してきたことが見えてくる。

01

Morton Feldman

時間を聴く

音が次にどこへ進むかではなく、ひとつの響きが消えていく時間に耳を置く。《For Philip Guston》では約4時間という長さが、音楽を「展開」から解放し、聴覚の尺度そのものを変える。

02

Meredith Monk

身体を聴く

言葉になる前の声、呼吸、身振りを音楽の中心へ置く。《Dolmen Music》では声が意味を伝える道具ではなく、複数の身体が空間を形づくる素材として現れる。

03

Anthony Braxton

集団を聴く

記譜と即興、個人と集団を対立させず、ひとつの可変的なシステムとして扱う。《Composition No. 19》では100本のチューバと演奏空間全体が、巨大なひとつの楽器になる。

04

Craig Taborn

境界を聴く

即興するピアノと、精密に書かれたアンサンブル。その境目を曖昧にすることで、演奏のたびに作品の輪郭が更新される。《Three Animal Riddles》は現代音楽とジャズの「あいだ」そのものを聴かせる。

05

Camille Norment

場所を聴く

音をコンサートホールから解き放ち、彫刻、建築、身体と結び直す。《Wonderful Marvelous – fugue state》では、作品を見る場所と音を聴く場所が重なり、鑑賞者自身も音響空間の一部になる。